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北海道立文学館で「有島武郎と未完の『星座』」展が開催されている

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札幌に来てから園の心を牽きつけるものとてはそうたくさんはなかった。
ただこの鐘の音には心から牽きつけられた。
寺に生れて寺に育ったせいなのか、梵鐘の音を園は好んで聞いた。

上野と浅草と芝との鐘の中で、増上寺の鐘を一番心に沁みる音だと思ったり、自分の寺の鐘を撞きながら、鳴り始めてから鳴り終るまでの微細な音の変化にも耳を傾け慣なれていた。
鐘に慣れたその耳にも、演武場の鐘の音は美しいものだった。
 
「星座」有島武郎(1922年)

 
北海道立文学館で「有島武郎と未完の『星座』」展が開催されている。
言うまでもなく、有島武郎は札幌の文学を語る上で欠くことのできない存在だ。
そして「星座」は、有島と札幌との繋がりを物語るひとつの証のような作品だった。

正直言って、文学館の特別展としては「今さら有島武郎か」的な部分はあるかもしれない。
有島武郎の存在が、道立文学館の設立を後押ししたとさえ言って良いくらいのものだからだ。
もっとも、だからこそ、道立文学館では有島武郎の特別展を開催する意義があるのだとも言える。

道立文学館の館内は、いつだって静かだ。
自分の他には、極僅かに2~3名の来館者がいるのみらしい。
そして、その人たちはいずれも年輩の方々だった。

美術館と違って、文学館は作品を展示する場所ではない。
文学作品は個人が各々好きな時に鑑賞できるものだから、文学館では作家に関する資料を鑑賞する。
そういう意味で、美術館のようには人を集めにくい部分があるのかもしれない。

けれども、文学作品を深く理解しようと思った時は、必ず、その文学者を深く理解しなければならない。
あるいは、その作品に関する丁寧な解説に触れることも、また大切なことである。
文学館は、そういった部分では、非常に重要な役割を担っているのだ。

難しいことを考えなくても、札幌と関わりの深い文学者の人生に触れるだけで楽しいものである。
今回の展示でも、札幌で暮らしていた頃の写真アルバムなど、私生活を知ることのできる貴重な資料があった。
これから、有島を読んでみたいと思っている人たちにもお勧めの展覧会だ。


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館内で唯一写真撮影が許されていたのが、この記念撮影コーナー。
「星座」の登場人物たちと一緒に記念写真を撮ることができる。
最近の展示では、こういった仕掛けが必要なのかもしれない。
 
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展示を見終えた後は、ミュージアムコーナーをチェック。
 
図録と一緒に、いくつかのお土産を購入した。
上の写真は「おばけのマールとニセコ」のポストカード。
ニセコ町の有島記念館で販売しているものらしい。

 
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もうひとつ、ニセコ町有島にある「高野珈琲店」の珈琲豆。
有島記念館には、「ブックカフェ 有島記念館×高野珈琲店」があるらしい。
ちなみに、「一房の葡萄」も有島の作品名に因んでいる。

今年は夏は、ニセコ町の有島記念館を訪ねてみたいな。

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by kels | 2018-02-24 17:26 | 文学・芸術

コーチャンフォーに行くと、原田康子の復刻文庫コーナーができていた

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札幌の冬は釧路の冬とよほど違います。
雪の降らない日が一日でもあるでしょうか。
さらさらした粉雪、しめった大きなぼたん雪、やわらかなふわりとした綿雪、さまざまな形の、さまざまな感触の雪がたえず目の前でちらついております。
 
「春の札幌」原田康子


コーチャンフォーに行くと、原田康子の復刻文庫コーナーができていた。
「海霧」に続いて、「風の砦」「聖母の鏡」が復刻されているのである。
コーチャンフォーの本気具合を感じた。

もとより、コーチャンフォーは釧路の会社である。
釧路出身の作家である原田康子に対する思い入れには、きっと強いものがあるのだろう。
原田康子はやはり郷土の誇りなのだと、改めて思い知らされた気がする。

釧路では新たに文学館が誕生するなど、文学の街としての活気がよみがえっているらしい。
子どもたちに郷土の財産を伝える「ふるさと教育」としても、きっと有意義なものだと思う。
こうした動きは、釧路だけではなく、北海道全体に広がってほしいなあ。

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by kels | 2018-02-24 06:48 | 文学・芸術

中島みゆきが「ミルク32」を発表してから、もう40年が経つ。

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ねえ ミルク またふられたわ 忙しそうね そのまま聞いて
ゆらゆら重ね上げた お皿とカップのかげから
ねえ ミルク またふられたわ 
ちょっと飛ばさないでよ この服高いんだから
うまくはいかないわね 今度はと思ったんだけどな
 

ねえ ミルク 悪いわね ふられた時ばかり現れて
笑ってるの 怒ってるの そんなに無口だったかしらね
ねえ ミルク 聞いてるの 
 

なんで あんなにあたしたち 二人とも意地を張りあったのかしらね
ミルク もう32 あたしたち ずっとこのままね
 
「ミルク32」中島みゆき(1978年)


店は、北海道大学から東に向かって、創成川を越えたところにある。
そこは、もう学生街とも言えない、住宅街の外れだ。
扉には「仔猫に注意」の貼り紙がある。

扉を開けて店内に入ると、中年の男性客が一人、マスターと話し込んでいる。
入口に近い席に座ろうと思ったら、仔猫が2匹ぐっすりと眠り込んでいた。
猫のいない席を探して、猫を起こさないように静かに腰を下ろす。

男性客は、どうやら旅行途中のようだった。
音楽業界の人間なのか、あるいは、ただの趣味なのだろうか、全国各地の音楽界の話をしている。
話題の中心は、やはり、中島みゆきだった。

コーヒーを注文して、店内を見回してみる。
1970年代のまま、時間が止まってしまったかのような暗がり。
期待に反して、中島みゆきの曲は流れていなかった。

扉が開いて、大学生のグループが入って来た。
ギターケースを抱えている。
マスターに声をかけて、店の奥へと消えていった。

猫は眠り続けている。
男性客が席を立ちあがり、支払いをしながら、まだ話し続けている。
「未だに、あの娘くらいのものだよ」と、マスターは中島みゆきの話を続けた。

やがて、マスターがゆっくりとコーヒーを運んできた。
男性客が去って、店内は静かになる。
猫はひたずらに眠り続けている。

中島みゆきが「ミルク32」を発表してから、もう40年が経つ。
当時32歳だったマスターも、40歳年を取ったのだろうか。


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by kels | 2018-02-11 07:21 | カフェ・喫茶店

「寒にしん」は冬のピークに食べる

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ニシンと言えば「春を告げる魚」であると、自分も思っていた。
ところが地元の新聞では、石狩湾のニシン漁が好調であると記事が出ている。
ニシンは、こんな寒い季節に獲れるものなのだと、少々感心してしまった。

確かに、スーパーの魚売り場に行くと、たくさんのニシンが並んでいる。
よく見ると「寒にしん」という表示がある。
やはり、寒い季節に獲れるニシンというのは、少し特別なものなのかもしれない。

小林多喜二の若い頃の作品に「田口の『姉との記憶』」という短編小説がある。

友人の田口が語る昔話の中で、女学生だった姉は、小樽に接する漁村で、ニシンのもっこ担ぎのアルバイトをしていた。
漁から戻って来たばかりの船に大量に積まれているニシンを、背中のカゴ(もっこ)に詰めこんで、陸まで運ぶ労働である。 
ニシンの鱗まみれになりながら、女性には重労働のこの仕事を、姉は暮らしのためにこなしていた。

大漁だったニシンで沸き上がる漁村には、隣町の小樽からたくさんの市民が見物に訪れたらしい。
姉は、見物客の中に学校の友人が紛れていることを、ひどく恐れた。
当時としても貧しい自分たちの生活を、学友には知られたくなかったのだ。

かつて、日本海側の漁村が、ニシン漁で成り立っていた時代の話である。

大漁のおかげで、今年は早い時期から、ニシンを食べることができてうれしい。
正月くらいにしか食べない数の子を食べる機会も、今年は増えた。
やはり北海道には、ニシンという魚が、とても良く似合うと思う。

ちなみに、小樽のニシン漁は、江戸末期から明治にかけてがピークだった。
沿岸部まで押し寄せるニシンの群れは「群来(くき)」と呼ばれ、漁師は春のニシン漁だけで1年間生活できたと言う。
近年少しずつ、この「群来」が復活しているようなので、今後も楽しみである。


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by kels | 2018-02-02 21:14 | 食・グルメ

伊藤整の詩集は「小樽雪あかりの路」に行く前に読む

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2月となり、北海道は冬のイベントの季節になった。
札幌では雪まつり、小樽では雪あかり。
真冬の屋外イベントくらい、北海道の厳しさを体感できるものはない。

小樽市の「小樽雪あかりの路」は、20回目のメモリアルということで随分盛り上がっている。
さっぽろ雪まつりに比べて、商業主義にまみれていないところが人気らしい。
素朴なキャンドルの灯りが無数に並ぶ様子は、確かに小樽という街に似合っている。

イベント名の「雪あかりの路」というのは、伊藤整の作品に因んでいる。
伊藤整は小樽出身の詩人で、小樽商科大学では小林多喜二の後輩にあたる。
「雪明りの路」は、小樽の冬を詠んだ伊藤整の詩集のタイトルだった。

この詩集には、小樽の冬がたっぷりと詰まっている。
最初に「雪明りの路」が出版されたのは大正15年(昭和元年)である。
大正時代の小樽の街の空気が映し込まれていると言ってもいい。

当時、伊藤整は弱冠20歳で、商大を卒業して小樽市内の中学校の英語教員をしていた。
それまでに作った作品を1冊にまとめたものが、この「雪明りの路」だったらしい。
序文には「十五六の年からもう六七年も私は詩を書いて暮らしてきた」とある。

もしも、小樽の街まで「雪あかりの路」を観に行こうと考えている人がいたら、ぜひ、その前に、この詩集を読んでもらいたいと思う。
大正時代の冬の小樽に思いを馳せたまま、JR北海道に乗って、冬の小樽に向かう。
そこには、期待を裏切らない昔ながらの小樽の詩情があるはずだ。

ちなみに、自分の持っている「雪明りの路」は、戦後の昭和27年に発行されたもの。
最初の詩集が発表されてから25年後に、改めて、この詩集が世の中に登場したということになる。
最初の詩集も欲しいけれど、そんなに簡単に手に入るものではないんだろうなあ。


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by kels | 2018-02-02 20:46 | 文学・芸術