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「羊をめぐる冒険」と札幌

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実に久し振りに「羊をめぐる冒険」を読みました。
もちろん、村上春樹さんの初期の名作です。
本当は、「ダンス・ダンス・ダンス」を先に読んだのですが、「ダンス」を読んでいるうちに「羊」が読みたくなってしまって、逆の順番で読んでしまったというわけです。
「羊をめぐる冒険」は、村上さんのデビュー作「風の歌を聴け」「1973年のピンボール」の続編といわれる作品で、初期の3部作と呼ばれたているものです。
3作品に共通しているのは登場人物で、語り手である主人公、その親友である「鼠」、そして2人の行きつけのバーの店主である「ジェイ」の3人です。
3部作の中で、登場人物達は確実に年を取り、様々な人生を歩みます。
3部作に続く「ダンス・ダンス・ダンス」も同じシリーズで、特に「羊」と「ダンス」は密接な関係を見せています。

僕は、この3部作が大好きなのですが、特に「羊」と「ダンス」については、舞台として札幌が登場するため、特に親しみ深い作品となっています。
「羊をめぐる冒険」で、主人公はある1匹の羊を探して北海道に渡りますが、そのベースキャンプとして札幌のホテルが重要な舞台となります。
ホテルの名前は「いるかホテル」。
そして、主人公の冒険は、この「いるかホテル」から始まっていくのです。
我々は歩き疲れると目についたレストランに入り、生ビールを二杯ずつ飲み、じゃが芋と鮭の料理を食べた。
でたらめにとびこんだわりには料理はなかなかのものだった。
ビールは実に美味しかったし、ホワイト・ソースはさっぱりとしてしかもこくがあった。
村上さんは、本当に札幌の街で飲むビールが好きですよねー。

やれやれ、と僕は声に出して言った。
それからもう一度無駄であることが認識された作業にとりかかり、五時の鐘を聞くと公園のベンチに座って鳩と一緒に玉蜀黍をかじった。
「公園」はもちろん大通公園のことで、主人公も露店の玉蜀黍を買って食べたものと思われます。
まさしく、札幌的風景です。
「鐘」はもしかして時計台の鐘?

札幌の街は広く、うんざりするほど直線的だった。
僕はそれまで直線だけで構成された街を歩き回ることがどれだけ人を摩耗させていくか知らなかった。
僕は確実に摩耗していった。
この、札幌の街の直線に関する文章は、とても興味深い部分です。
確かに、札幌の街は、京都方式と呼ばれる碁盤の目状に構成されており、直線と直線との組み合わせによって街が成り立っています。
でも、それが「人を摩耗させる」と言われると困っちゃいますよねー(笑)

さて、ところで重要な舞台である「いるかホテル」のモデルについては、当時からいろいろと言われていますが、一応もっとも有力な説とされているのが、中島公園に隣接して立つノボテル札幌(元アーサー札幌)です。
まー、村上さんの小説にはモデルがあってないようなものなので、その真贋は定かではありませんけれどね。

モデルというと、最終目的地である「十二滝町」のモデルについても、いろいろな推測を呼びました。
もっともらしく書かれているから、村上さんの小説って深読みしちゃうんですよねー。
いろいろ調べたあげく「あれはウソです」って言われても全然不思議じゃないですから(笑)

まあ、そういう深読みはさておいて、札幌で暮らしながら、この「羊をめぐる冒険」を読むというのは、それなりに幸せな感じがします。
ちょっとだけリアリティを感じられるような気がするというか。
もっとも、実際にはリアリティなんてほとんどないようなものなんですけれど。

羊をめぐる冒険を終えた主人公は、「ダンス・ダンス・ダンス」で再び札幌に舞い戻ってきます。
その辺りのお話は、また次回で☆
by kels | 2007-02-13 23:17 | 文学・芸術 | Comments(2)
Commented by ☆椅子 at 2007-02-20 12:43 x
DOCOMORO100さんからとんできました。初めまして。
私も村上春樹信者でとくに「風の歌を聴け」の熱狂的読者です。
さて、私は毎日3キロ歩いているのですが、ひたすら直線の道路を歩くたび「ダンス・ダンス・ダンス」の上の直線に関する文章を思い出します。
私はそんなに磨耗しないですが、でもたまにほかの町の曲がりくねった街路を歩くとそれはそれで楽しいです、確かに。
Commented by kels at 2007-02-23 21:18
☆椅子さん、はじめまして。
直線で作られた札幌の街は、やっぱり個性的な街なんですねー。
僕も「摩耗する」と思ったことはないんですけれど、目的地が遙か遠くに見えている状態で歩き続けるというのは、確かに「摩耗する」ような気もしますね。
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