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きっと、僕は街で一番早くコートを羽織ったビジネスマンかもしれない

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千歳空港で荷物を受け取って外に出ると、空気は予想していたより冷ややかだった。
僕は首に巻いていたダンガリのシャツをTシャツの上に着こみ、彼女はシャツの上から毛糸のベストを着た。
東京よりちょうど一か月分早く、秋が地上に腰を据えていた。

「羊をめぐる冒険」村上春樹(1982年)

もうすぐ10月が終わろうとしている。
夏の終わり以降、札幌の季節は突然駆け足で通り過ぎて行く。
秋から冬にかけて、季節はあっという間に流れ去っていくようだ。

気が付けば、冬はもうすぐ目の前まで迫っていて、秋は後ろ姿で立ち去ろうとしている。
今年初めてストーブを使った話や、いつ冬タイヤに交換すべきかという話を、人々は交わすようになる。
色づく街は、やがて訪れるモノクロームの季節の前触れにすぎないのだ。

朝夕の気温と真昼の気温差とが大きく、僕たちは、コートを着るべきか、マフラーを首に巻くべきかで悩まされる。
女子高生が早々に赤いチェックのマフラーを首に巻き付けている中、ビジネスマンは季節の流れに抗うかのように最後までコートを羽織ろうとしない。
まるで寒さに負けたものが順番に次の季節へと脱落していくかのように。

きっと、僕は街で一番早くコートを羽織ったビジネスマンかもしれない。
そのうえ、首元にはマフラーを巻き付けて、冬への旅を急いでいるかのように季節を先取りしている。
昔から、何かにつけて我慢するということが苦手な子どもだったのだ。

秋のコートが冬のコートに変わる日は、もう、そう遠くはないだろう。


by kels | 2017-10-29 06:55 | ファッション・ライフスタイル
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