かつて、タウンプレイガイドが全盛だった時代、札幌にも「札幌青春街図」というシリーズの素晴らしいタウンガイドがあった。 タウンガイドとは、いわゆる観光客に向けたガイドブックとは違って、そこで暮らす主に若者たちを対象とした街のガイドブックである。 インターネットが情報網の中心となるまで、こうしたタウンガイドは若者たちの行動範囲を広げるために、かなり重要な役目を果たしていた。 プロジェクトハスウ亜離西によって出版された「札幌青春街図」は1970年代から1980年代にかけて、合計4回の発行を数える。 ・1974年 札幌青春街図 ・1976年 札幌青春街図 ・1984年 札幌青春街図 なさそで ありそな あんびしゃす ・1988年 札幌青春街図 もっと遊びのキーワード 全体構成として、いずれも共通しているのは、若者たちが本を片手に街に飛びしたときに、すぐに使えるようなお店がたくさん紹介されているというところ。 お店のジャンルは多岐に渡り、レストランから喫茶店、飲み屋、書店、骨董屋に至るまで、実に様々なカテゴリが掲載されている。 そして、いずれのシリーズにおいても、プロジェクトハスウ亜離西独特の視点による批評が、あちこちに漂っている。 たとえば、みそラーメン発祥の店として、今も根強い人気を持つ老舗ラーメン店「味の三平」の紹介コーナーを見ると、「昔ススキノに店があった時は確かに美味しかったが、今はそれほどでも・・・というのが一般の評。値段は最高」(1976年版)という具合に、お店の宣伝とは程遠い辛口評価も当たり前のように掲載されている。 ガイドブックと言えば、お店の提灯記事みたいなものが当たり前となった現代とは、かなり趣が異なっている。 さらに、さらに、もうひとつの特徴は、このタウンガイドでは、お店だけではなく、お店を営む人が強く前面に出ていることである。 まさに、札幌の街を「人」という切り口から見た素晴らしいガイドブックとなっていることが、このシリーズが今もなお新鮮な輝きを見せる理由なのだろう。 僕は今でもこうした古いガイドブックを見ながら、街歩きをすることがある。 札幌の街の移り変わりは激しいから、多くの店が既に消えてしまっているけれど、それでも遠い1970年代から1980年代のことを想像しながら、街を歩いていくことは楽しい。 時には、当時と何も変わらないお店を発見できたりすると、それだけで胸がドキドキしたりするのである。 さて、本シリーズであるが、もちろん遥か昔に絶版で、今となっては入手困難。 ただし、古本屋には時々並ぶものでもあるので、気が向いた方にはぜひとも当時の札幌を知るためのガイドブックとして活用していただきたいと思うのである。 なお、おまけ情報として、プロジェクトハスウ亜離西では「味覚ガイド256店 さっぽろ食べたい読本」(1987年)の出版もある。 「札幌青春街図 もっと遊びのキーワード」と併せて読むと、バブル時代の札幌がよく見えてくるのでお勧め。
by kels
| 2011-05-01 21:19
| 観光・風物詩
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