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素朴な札幌焼を守り伝えたい

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本州ものに負けない焼き物の研究と開発に生涯をささげた故涌井辰雄さん。
故人により半世紀ぶりに世に出された札幌焼について、二代目館長の涌井武子さんにお尋ねしました。

この民芸館は、二年前に亡くなった夫の辰雄が、「札幌焼」の伝承の灯を消すまいと、昭和53年8月に開館したものです。
札幌焼のことをご存じの方は、意外と少ないと思いますが、生前に夫から聞かされた話をいたしますと、札幌の焼き物の歴史は、明治の中ごろまでさかのぼるそうです。

多くの陶工や事業家が札幌産の焼き物を試みた中で、大正4年になって、中井陶器工場が現在の旭山公園の駐車場近辺で円山粘土を原料として窯業をはじめ、ここで生産された各種陶器に「札幌焼」の銘を使い、地場産陶器の一時代を築いたそうです。
残念なことに、この工場は本州産のセトモノ攻勢の前に、十年間で閉窯となり、同時に札幌焼も幻の陶器となったそうです。

しかし、この中井陶器工場の中心的陶工の一人であった夫の叔父の涌井広三が、札幌焼の技を伝承し、素焼き中心の窯業を営んでおりました。
夫の辰雄は、この叔父の下で焼き物の技術を学んだ後、21歳のときに、北海道工業試験場に入って、陶器の研究を進めました。

そして、昭和52年、同所を退いた後、この地に北辰窯を開設。
自分が当時、叔父のところで作っていたものを思い出し、また、中井陶器工場の跡地から陶片を拾ってきて、札幌焼を復元するとともに、自作の札幌焼を再び世に出したのです。

札幌焼は、本州産陶器のようにきれいなものではありませんが、生活の匂いのする泥くさい素朴な感じが私は好きです。
夫が生涯をささげた札幌焼の技を、これからも守り伝えていきたいものです。

私設札幌焼民芸館
東区東苗穂10条3丁目640番地の22
土曜日休館

「広報さっぽろ(豊平区版)1984年8月号」より


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by kels | 2012-03-21 20:59 | 歴史・民俗 | Comments(0)
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