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真夜中の電話

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携帯電話なんて気の利いたものが、まだ普及する前の話だ。
僕たちは一人暮らしのアパートの部屋に電話線を引いて、仲間たちとの連絡に使った。
無断欠勤したアルバイト先からの不気味な電話が鳴るほかは、仲間からのくだらない暇潰しの電話ばかりが鳴った。

毎晩、決まった時間に、僕は彼女に電話をかけた。
彼女が帰省や旅行で部屋を留守にしている以外の夜には、僕は必ず電話をかけた。
時々、彼女からの電話が先に鳴ることもあったけれど、ほぼすべては僕が彼女のベルを鳴らした。
ルーティンな無駄話だけがあった。
誰かの噂話や家族の話、将来の夢、今日一日のできごと。
くだらない無駄話をしているだけで、僕たちはどこか幸せになれた。

彼女が電話に出ない夜、僕は眠れない夜を過ごした。
誰でもいいから片端から仲間に電話をかけて、馬鹿話をしてすべてを忘れようとした。
電話を切ると、一人暮らしの静寂が襲ってくる中で、僕はどうしようもなく孤独だった。
午前3時を過ぎると、電話での馬鹿話に付き合ってくれる仲間たちもいなくなり、僕は本を読んだりレコードを聴いたりして、眠れない夜をどうにかして潰そうと努力した。
やがて、新しい朝が始まるまで、僕は言いしれぬ何かと争い続けた。

誰かの電話番号を記憶することが大切だった時代。
彼女の電話番号を、僕は彼女自身と同じくらいに、今ではすっかりと忘れてしまった。
ただ、あの眠れない夜の孤独だけが、今も僕の中のどこかで渦巻いている。

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by kels | 2010-12-06 21:07 | 日記・つぶやき | Comments(0)
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