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円山動物園

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円山動物園は、僕の中でいつでも秋の匂いがしている。
山の色がすっかりと赤く染まり、来園者は厚手の上着を着用し、街よりも澄んだ空気が肺の中で冷たく感じられた。

僕の隣には、いつでも誰かがいた。
時折触れ合うくらいの、小さな隙間を作りながら、僕らは地下鉄の駅から動物園までの坂道を登った。
平日の午後の動物園には、もちろん来園者なんかほとんどいなくて、僕らは盛りの過ぎたお祭りみたいな動物園の中を歩き回り、そして疲れた。
帰り道も、僕らは円山公園の坂道を、落ち葉を踏みながらゆっくりと歩いた。
落ち葉に埋もれてもみ合っているスズメバチを、僕らは慎重に避けた。
裏参道を歩きながら、あまり寒いことに耐えかねて、僕らは見知らぬ喫茶店に入り、熱いココアを飲んだ。

やがて、西4丁目の地下鉄駅が見える頃、ようやく僕らにとっての円山動物園が終わる。
静かな動物園と違って、街は生き生きと活動していて、そして賑やかだった。
今まで歩いてきた道のりが、まるで嘘みたいに僕らは突然日常生活の中に引き戻される。
そんな違和感を、僕はどれだけ感じただろう。

今年もまた秋が来て、僕は円山動物園を思い出すだろう。
透き通るほどに澄んだ冷たい空気と乾いた落ち葉ともみ合うスズメバチ。
そして、割り切れない何かが、今も僕の中でくすぶっている。


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by kels | 2010-10-04 21:57 | 観光・風物詩 | Comments(0)
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