僕の実家は、関東の常磐線沿いの小さな街にある。 僕自身そこで暮らしたことはなく、僕の家族がそこで暮らしているというだけのことだ。 その街にも、ちゃんと小さな神社があって、そして、それなりにきちんとした由緒を持っている。 たまに正月休みに帰省すると、僕は家族と2年参りに出かけた。 紅白歌合戦が終わり、除夜の鐘が聞こえる頃、街の人達は神社へと集まっていく。 人並みに付いて神社へ向かうと、お焚きあげの炎が勢いよく燃えている向こうに、小さな神社が見えて、人々は思い思いに参拝をしていた。 参拝を終えると、参拝客一人一人に簡単な手土産が手渡され、人々は除夜の鐘の音の中、家路を辿るのだ。 古い御札を、お炊きあげの炎の中にくべると、一瞬炎の中に小さな炎が舞って、御札はねじれるようにしながら、たちまち見えなくなった。 北海道とは違う、木枯らしの冷たさの中で、炎の暖かさがとても優しいような気がした。 歴史のある古い街には、どこか計り知れない寛大さがあると、いつでも思ったものだ。 やがて、北海道で家庭を持ち、定職にも就いた後は、なかなか正月に帰省する機会も難しくなり、ここ数年は北海道での正月を過ごしてばかりだけれど、時に、あの小さな街の小さな神社が恋しくなるような気がする。 木枯らしの中に吹き上がったお炊きあげの炎の匂いは、暮らしたことのない故郷の懐かしさを思い出させてくれる。 ↑↑↑↑↑↑ 「ブログ村」への参加を始めました。1日1回、クリックをお願いします。
by kels
| 2010-01-01 18:40
| コラム・随想
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