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浴衣

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浴衣と言うと、少し特別なファッションという感覚が強かった。
ところが、最近では若い世代にも浴衣が再評価されて、夏祭りや花火大会の会場などに行くと、浴衣姿の女性を見かけることは珍しくなくなった。
文明の進化の中で、日本的なものが再評価されるという流れのひとつなのだろうか。
高度成長期以前の日本では珍しくなかったものではあるが、きちんと次の世代へ受け継がれていくということであれば、決して悪いことではない。

浴衣着て少女の乳房高からず 高浜虚子
ところで、北海道の夏というのは、昼夜の寒暖の差が非常に激しいから、午後には真夏日の街であっても、夕方以降は半袖姿ではいられないくらいに寒くなるということも珍しくはない。
若い女の子達が気合いを入れて浴衣姿をばっちりキメているのを見ると、夜店を冷やかすには少しツラいんじゃないかと思うこともある。
浴衣はやはり東京辺りの夕涼みに似合うような気がする。

夕日あかあか浴衣に身透き日本人 中村草田男
現代社会の街にあって、浴衣姿の女性はそれだけでどこかノスタルジアな存在である。
それは、どこか失われた日本人の残像のようにも見える。
高度成長期の前には日常的だった光景が姿を消して、記憶の断片みたいなぶつ切りの光景だけが、今に残っているかのように。
それでも、我々は日本人としてのアイデンティティを拭い去ることはないはずだ。
街並みの浴衣ひとつにも、在りし日の日本は脈絡と受け継がれている。

借りて着る浴衣のなまじ似合ひけり 久保田万太郎



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by kels | 2009-08-14 21:17 | コラム・随想 | Comments(0)
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