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喫茶店の女の子は、きっと、あの頃の僕のことを覚えているに違いない。

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真夜中の喫茶店で、懐かしい人と昔話をした。
「あの人と会っているの?」
彼女は静かに笑って、そして、小さく首を横に振った。

札幌の街外れに、小さな雑貨屋があった。
店の半分が雑貨売り場で、残りの半分がカフェだった。
いつ訪ねても静かな、気持ちの良い店だった。

その店では、アンティークとも呼べないような、中途半端な古物を売っていた。
ガラクタみたいな雑貨が好きな僕は、少しずつ、その店の虜になった。
気が付けば、僕は毎週末をその店で過ごすようになり、店は僕の暮らしの中でなくてはならない存在になっていた。

店にとって、僕は決して良い客ではなかっただろう。
週末ごとに現れては、他愛ない世間話をして、ガラクタみたいに細かいモノを、ひとつふたつ買っていくだけの客だ。
それでも僕は、数年間もの週末を、その店で過ごすことを続けた。

やがて、カフェがなくなった。
札幌で一番好きだったカフェを失ったみたいに、僕は大きく傷ついていた。
何か取り返しの付かない不始末をしでかしてしまったような気持ちだった。

それでも僕は、週末になると店を訪れた。
店の隅から隅までを歩き回り、何か見落としているものはないかと探して回った。
店のすべてが、僕は好きだった。

ある日、かつてカフェだった空間に、新しい店がオープンした。
僕の中で何かが失われたと、僕は思った。
カフェがなくなったとき以上の失望を、僕は感じていたのかもしれない。

あるいは僕は、あまりにものめり込みすぎていたのだろうか。
ひとつの店が、僕の暮らしの中になくてはならない存在となっていた。
小さな雑貨屋は、小さな雑貨屋として以上に、僕の中で重たい存在となっていたのだ。

通じ合えない何かを感じたとき、僕は店から離れることを決めた。
あれからもう長い時間が経つ。
僕の暮らしは、まるでゼロから作り直されたように変わってしまった。

喫茶店の女の子は、きっと、あの頃の僕のことを覚えているに違いない。
「最近は行っていないんですか?」と、彼女はつぶやいた。
まるで大昔の話でもしているみたいな気がして、僕は妙に照れくさかった。


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by kels | 2015-11-14 21:24 | Snap Short Stories | Comments(4)

今年新しく購入した洋服の多くはフランスのものだったような気がする

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全身きれいめな格好に、ヴィンテージのバッグを合わせる。
あるいは、コンバースのスニーカーでハズす。
そんなパリでは小気味良くてセンス良く見える格好が、東京の街中では貧相に映ることがある。

ケイト・モスやシエナ・ミラーを、特に私たちキャリア世代では輩出しづらいのかもしれない。
逆に、パリのカフェなどで、東京での隙のないスタイル、そのままを貫いた人を見かけると、どうにも浮いて見える。
場所には場所によって似合うスタイルがあると、強く思う瞬間だ。

「雨上がりのパリ」雨宮塔子(2011年)

最近はずっとフランスが好きだ。
ある程度の年齢になってからは、きれいめを維持するようにしているけれど、休みの日にまできっちりした格好だと、息がつまるような気がする。
フランスのきれいめは、きれいめの中に適度な抜け感があるようで、不思議とリラックスできる。

何かを意識したわけではなくて、気が付くと、フランスのブランドばかり集まっていた。
清潔感があって、動きやすくて、だらしなくないから、大人にもちょうどよいのかもしれない。
今年新しく購入した洋服の多くはフランスのものだったような気がする。

そんなわけで、最近はフランスに関するエッセイもいろいろと挑戦中☆


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by kels | 2015-10-30 22:58 | ファッション | Comments(4)

当時、1980年には新幹線の札幌乗り入れが実現すると、みんな信じていたのだろうか

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札幌駅は明治13年、札幌~手宮間の鉄道開通とともに開業し、今年は95周年になる。
新橋~横浜間(明治5年)、京都~神戸間(明治7年)についで、日本では3番目の鉄道であった。
その当時、札幌の人口は8千に過ぎなかった。

新幹線の乗り入れが昭和54、55年頃までに実現すると見られるが、これに対処して、いま「札幌ターミナルビル」の建設と、駅前地下街の拡張などが計画されていることは、まことに喜ばしいことと思う。
札幌駅開設100周年に当たる昭和55年には、駅周辺は大きく変容していることだろう。

「さっぽろ昨今」西條正人(1976年)

上の文章が書かれたのは、1976年のことである。
当時、1980年には、新幹線の札幌乗り入れが実現すると、みんな信じていたのだろうか。
まさか、2015年になっても、札幌までの新幹線開通が実現していないなんて、夢にも思っていなかったことだろう。

ちなみに、札幌に「そごう」が進出したのは1978年。
札幌駅周辺の大変容を象徴する出店だったのかもしれない。
将来に夢を持つことができる素敵な時代だったのだ。


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by kels | 2015-10-24 05:58 | 札幌のこと | Comments(2)

村上春樹の作品にはよく北海道が登場する。代表例が「羊をめぐる冒険」と「ダンス・ダンス・ダンス」だ。

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「羊をめぐる冒険」(1982年)の舞台とされるのが、道北の上川管内美深町仁宇布である。
鉄道で塩狩峠を越え、たどり着くのが「札幌から260キロメートル」「主要産業は林業と木材加工」である「十二滝町」の「日本で第3の赤字路線」の終着駅。
旧国鉄美幸線の終点だった仁宇布に重なる。

そこに羊450頭を飼う松山農場がある。
主人公が訪れる羊牧場にロケーションが酷似しているとして、国内外の村上文学ファンが集まる「聖地」となっている。

ところが、農場主の柳生佳樹さんは、「80年ごろに農場を開いたが最初は肉牛。羊を始めたのは87年で、小説が出たときは、まだ羊牧場じゃなかった」と打ち明ける。
96年に羊飼い仲間から初めて小説のことを知らされ、読んでみて驚いた。
「ここにそっくり。なんという偶然なんだろうと」

村上さんは81年に滝川や士別で羊を取材したが、美深に来たかは不明だ。
ただ、村上文学に詳しい札幌大の山崎真紀子教授(日本近現代文学)は、「作者は学生時代から何度も道内を旅行。美深も訪れていたはずで描写にリアリティ-がある。作家として記憶の抽斗から最もふさわしい場所を選んだのでは」と推し量る。

「羊をめぐる謎」和田年正(北海道新聞2015年10月17日付け夕刊)

村上春樹の作品には、よく北海道が登場する。
その代表例が、「羊をめぐる冒険」と「ダンス・ダンス・ダンス」だ。
札幌をはじめとして、道内各地の実在地名が登場する。

ところが、「羊をめぐる冒険」の重要な舞台となる「十二滝町」は架空の町だった。
開拓の歴史など詳細に描かれる背景が、舞台が架空の町であることを求めたのだろう。
実際、十二滝町が架空の町であることで、小説は小説として成り立っている。

一方で、この架空の町のモデルを巡って、様々な憶測が広がることになる。
そして、その結論のひとつが上川管内美深町仁宇布だった。
この推論は、今や定説として、すっかりと定着したらしい。

作品の舞台を訪ねて回ることは、文学を楽しむ方法のひとつである。
架空の町のモデルを想像しながら旅をするのも、また文学の楽しみ。
そう、文学というのは作品の中だけで終わらせてはもったいないものなのだ。

僕たちは身近な文学散歩をもっともっと楽しむべきなんだろうなあ。


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by kels | 2015-10-17 19:37 | 文学 | Comments(0)

窓を鳴らしていたあのかすかな風の音は、秋の深さを告げる音のようでもあった

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窓硝子が夜風に、音を立てていた。
そうだ、ゆうべ、窓を鳴らしていたあのかすかな風の音は、秋の深さを告げる音のようでもあった。

「挽歌」原田康子(1956年)

今週は本当に寒い日が続いた。
僕はオフィスでもカーディガンを着るようになった。
なにしろ、それでなくても古いビルの、薄い窓の近くで仕事をしているのだ。

真夏から考えてみると、今年は順調に秋が深まっているような気がする。
残暑らしい残暑もなく、おかしな天候不順もなかった。
寒くなるべくして街は順調に寒くなっている。

冬のセーターも出したし、こたつにも電気を入れた。
夕食には温かい鍋料理がおいしくなった。
夜はすっかりと熱い紅茶を飲むのが定番になった。

そして僕は、夏以上に本を読む時間が増えた。
読書の秋?
暗くなるのが早くて、外は寒いから、僕は温かい室内で本を読むのだろう。

ある意味で幸せな季節なのかもしれない。


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by kels | 2015-10-17 06:02 | 秋のこと | Comments(0)

新しいコートを買うということは、新しい冬を迎えるための儀式みたいなものなのだ

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わたしはわたしと同じ年頃の娘たちの姿が目についた。
娘たちはワンピースや、秋向きの薄色のコートを着て、赤や緑や紺の靴をはき、ベレやボンネット型の帽子をかむっている。
わたしのかむっている帽子は、紺色の登山帽だ。
それにわたしは黒のスラックスに、大柄なチェック模様のブラウスを着て、ズックの靴をはいている。

「挽歌」原田康子(1956年)

週末、久しぶりにショーウィンドゥの写真を撮って歩いた。
知っていたことだけれど、ショーウィンドゥの中は、すっかりと冬の装いになっていた。
札幌で一番早く季節の入れ替わる場所が、この店先のショーウィンドゥなのだ。

どこの店でも一番目立つ場所には、冬物のコートが飾られていた。
この季節に最も売れるものであるからだろうし、お店として最も売りたいものでもあるからだろう。
一際目を引くから、ショーウィンドゥにもぴったりなのかもしれない。

冬が来ると新しいコートが欲しくなるのは、僕が人一倍寒がりだというせいばかりではないだろう。
新しいコートを買うということは、新しい冬を迎えるための儀式みたいなものなのだ。
そんな理屈でも付けなければ、新しいコートを買うことなんかできない。

ということで、週末はJRタワーの静かなセール。
そろそろ冬物のアウターでも探しに出かけてみようかな。


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by kels | 2015-10-15 21:53 | ファッション | Comments(0)

朝、目を覚ますと、窓の外遠くに白い山が見えた。手稲山に雪が積もっているのだ。

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札幌近郊の手稲山にも雪が降った。
他の山はともかく、この山に雪が降ると、札幌に住む者は落ち着かない。
なにしろ眼と鼻の先の山である。
手稲に雪が降ると、冬はすぐそこまで来たようなものである。

「雪のくる前」原田康子(1969年)

朝、目を覚ますと、窓の外遠くに白い山が見えた。
手稲山に雪が積もっているのだ。
雪が積もっているだけで、山はいつもとは違う山のように見えた。

札幌の人々は、冬の訪れを手稲山に積もった雪で知るという。
少なくとも冬は、そう遠くないところまで近づきつつある。
初めて見る冬の影が、白い手稲山なのだろう。

実際、昨日・今日とひどく寒い日が続いている。
もはや、コートなしでは外を歩くことはできないくらいだ。
いくら札幌とは言え、10月とは思えないような寒さである。

まさか、このまま冬に突入することはないだろうとは思うのだけれど。





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by kels | 2015-10-14 21:08 | 冬のこと | Comments(5)

今年も札幌駅のJRタワーがピンク色に輝いている

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今年も札幌駅のJRタワーがピンク色に輝いている。
ピンクリボン・キャンペーンが始まっているのだ。
ピンク色の札幌駅は、10月の風物詩としてすっかりと定着したらしい。

JRタワーがピンク色になる演出が始まったのは2007年のこと。
この年は、10月12日までの期間限定キャンペーンだった。
現在は、10月いっぱい、JRタワーはピンク色に染まっている様子を見ることができる。

ちなみに、2007年のレポート記事はこちら。
http://poros.exblog.jp/7540751/

ところで、このブログ、当時は、札幌市内の歴史的建造物の紹介がメインになっていた。
なんだかんだ、このブログも長いなあ(笑)


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by kels | 2015-10-13 21:33 | 秋のこと | Comments(2)

今日の夕刊で、北海道サーモン協会の解散が報じられていた

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川にはさまざまな表情があり、橋や堤防からながめるとき、そこに歴史の哀歓が伝わってくる。
豊平川は文字どおり札幌の代表的な川だが、汚濁にまみれていたその川で、アカハラが釣れるようになったというニュースは心なごむ。
清流よみがえる、なんてことが事件になる現代がおぞましい次第だが、サケがのぼってくるなどは夢もいいところだとして、取り戻した清流を二度と汚してはなるまい。

「さっぽろ昨今」木原直彦(1976年)

今日の夕刊で、北海道サーモン協会の解散が報じられていた。
高齢化による会員減少のため、会の維持が難しくなったということらしい。
ひとつの時代の転機という感じがした。

新聞記事によると、豊平川のサケは1953年に6匹が確認された後、姿を消した。
1978年から「カムバック・サーモン運動」が開始。
1979年に100万匹の鮭を放流したところ、1981年には1,500匹が戻ってきたという。

鮭は今も毎年遡上しており、豊平川で生まれ育った野生の鮭も含まれているらしい。
いわゆるネイティブ・サーモンだが、今後はこうした野生鮭の保全も焦点になると見られる。
自然を自然のままで保全するということは、本当に大変なことなんだなあと感じてしまう。

週末は久し振りに「サケ・ウオッチング」に出かけてみようか。


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by kels | 2015-10-13 21:17 | 随想 | Comments(0)

真心ブラザーズの「PACK TO THE FUTURE」が発売になった

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1970年~1980年代に発表されたヒット曲が、真心ブラザーズの2人の手によって、オトナの極上ユルロックに大変身。
アイドルブームに沸く現在の音楽シーンに、その礎となった名曲カバーで一石を投じるコンセプト・アルバム。
同時代を共有したリスナーには、かつての思い出が蘇える楽曲であり、当時を知らない若い世代には「YOUNG PERSON'S GUIDE」として、音楽との新たな出会いや新たな出会いや新たな発見になるであろう一枚。
アルバムタイトルに「PACK TO THE FUTURE」と名付けるあたりも、まさに彼ららしい「遊び心」と、一見相反するような「音楽に対する真摯さ」を感じさせる。

真心ブラザーズ公式サイトより

真心ブラザーズの「PACK TO THE FUTURE」が発売になった。
昔のアイドルソングをカヴァーしたアルバムである。
知らない曲も含めて懐かしい曲ばかり、たくさん収録されていておもしろい。

新聞の文化欄では、松田聖子の「風立ちぬ」のカバーが紹介されていた。
この曲は大瀧詠一の作品ということで、イントロに「君の天然色」が使われているということだった。
実際に聴いてみると、確かに大滝ファンには楽しいかもしれないと思った。

僕が一番気に入ったのは、石川秀美の「ゆ・れ・て湘南」だった。
実は、僕自身、この曲をよくギターで弾きながら歌っているのである。
ロック・アレンジもカッコ良くて、この曲ばかり繰り返し聴いている。

この曲の作詞は松本隆で、完成度はかなり高い。
「君だって大人の顔をして忘れてしまうよ」みたいに、松本隆らしい胸キュンなフレーズが散りばめられている。
僕は特に2番目の歌詞が好きだ。

サーフボード抱えながら人が渡る
重そうな青春抱きしめて
愛して疲れたボクたちの横顔みたいさ My Little Girl
ゆれて海岸ロード
ひとりレモネード飲む君が好きだった Hold Your Hand
ゆれて ゆれて 湘南
ひびく波のララバイ そして 夏に背を向けて

「ゆ・れ・て湘南」石川秀美(1982年)

1980年代のアイドルソングには、プロの仕事らしさが満ち溢れている。
子供だましの大量消費音楽には留まらない魅力があることは確かだった。


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by kels | 2015-10-11 07:00 | 音楽 | Comments(0)