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村上春樹の小説の中に、1980年代の札幌の記憶が描かれている

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僕は札幌の街につくと、ぶらぶらいるかホテルまで歩いてみることにした。
風のない穏やかな午後だったし、荷物はショルダー・バッグひとつだけだった。
街の方々に汚れた雪がうずたかく積み上げられていた。

空気はぴりっと張り詰めていて、人々は足下に注意を払いながら簡潔に歩を運んでいた。
女子高生はみんな頬を赤く染めて、勢いよく白い息を空中に吐き出していた。
その上に字が書けそうなくらいぽっかりとした白い息だった。

僕はそんな街の風景を眺めながら、のんびりと歩いた。
札幌に来たのは四年半ぶりだつたが、それはずいぶん久し振りに見る風景のように感じられた。

「ダンス・ダンス・ダンス」村上春樹(1988年)

村上春樹の小説の中に、1980年代の札幌の記憶が描かれている。
札幌の人間として、僕は素直にうれしいと思う。
「いるかホテル」は、未だに見つからないけれども。


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by kels | 2017-02-19 05:58 | 文学 | Comments(0)

運転手は余裕の笑みを浮かべながら、「何年、この商売をやっていると思ってるんですか」と言った

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小樽駅前からタクシーに乗った。
「商大まで」と言うと、運転手は笑って「すぐに分かりましたよ」と言った。
僕はまったく驚いてしまった。

「どうしてですか?」と、思わず僕は言った。
運転手は余裕の笑みを浮かべながら、「何年、この商売をやっていると思ってるんですか」と言った。
「学生さんは、見ればすぐに分かりますよ」

中国人観光客で溢れる街をタクシーは軽快に走った。
「もうすぐ卒業式ですね」と、大学の話題が続く。
あくまでも、この運転手は、僕を商大生だと信じ込んでいるらしい。

どうしようもなくなって、僕は「僕は学生じゃなくて、今日は仕事で来たんですよ」と言った。
微妙な沈黙が、狭い車内に漂った。
タクシー運転手が長年積み重ねてきた職業的勘が崩れた落ちた瞬間だった。

タクシーは次々と学生たちを追い越しながら、地獄坂を上った。
大学生に間違われるのも、これが最後かもしれない。


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by kels | 2017-02-05 07:07 | 随想・日記 | Comments(2)