店は、北海道大学から東に向かって、創成川を越えたところにある。 そこは、もう学生街とも言えない、住宅街の外れだ。 扉には「仔猫に注意」の貼り紙がある。 扉を開けて店内に入ると、中年の男性客が一人、マスターと話し込んでいる。 入口に近い席に座ろうと思ったら、仔猫が2匹ぐっすりと眠り込んでいた。 猫のいない席を探して、猫を起こさないように静かに腰を下ろす。 男性客は、どうやら旅行途中のようだった。 音楽業界の人間なのか、あるいは、ただの趣味なのだろうか、全国各地の音楽界の話をしている。 話題の中心は、やはり、中島みゆきだった。 コーヒーを注文して、店内を見回してみる。 1970年代のまま、時間が止まってしまったかのような暗がり。 期待に反して、中島みゆきの曲は流れていなかった。 扉が開いて、大学生のグループが入って来た。 ギターケースを抱えている。 マスターに声をかけて、店の奥へと消えていった。 猫は眠り続けている。 男性客が席を立ちあがり、支払いをしながら、まだ話し続けている。 「未だに、あの娘くらいのものだよ」と、マスターは中島みゆきの話を続けた。 やがて、マスターがゆっくりとコーヒーを運んできた。 男性客が去って、店内は静かになる。 猫はひたずらに眠り続けている。 中島みゆきが「ミルク32」を発表してから、もう40年が経つ。 当時32歳だったマスターも、40歳年を取ったのだろうか。 ※※※「にほんブログ村」に復活しました。1日1クリックをお願いします! にほんブログ村
by kels
| 2018-02-11 07:21
| カフェ・喫茶店
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Comments(2)
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J.W.
at 2018-02-11 11:53
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「ミルク」が未だに現役なのには、驚くと同時に自分も励まされている気になります。私は中島みゆきとは入れ違いで札幌を去った世代で、「ミルク」設立の頃は知りませんが、後年訪ねたことがあります。また、彼女がもう一つ歌で取上げている「ライフ」という店には学生時代、私も良く通いましたね。「ミルク」設立に携わったマスターの音楽仲間でもある宮越陽一氏が、いまや「宮越珈琲」の社長であるとは!40年以上も経つと一つの歴史になりますね。
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kels at 2018-02-24 07:01
J.W.さん、こんにちは。
「店の名はライフ」、一度行ってみたかったです!(笑)
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by kels カテゴリ
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