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女子学生が大学講師に御礼の手紙を書いたところ、自身のメールアドレスを記した返信が届いた

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遅くなって店を出てみると、まだ降り続いている粉雪に風さえ少しまじって、人通りの疎らになった夜の街は、古いフィルムのようにかすれて煙っていた。
仙子はコートの襟を合せながら、ふと、あの男はこの大雪でも、銀行の前に立っているだろうかと思った。

「凍原」船山馨(1955年)

新しいカフェでコーヒーを飲んでいるとき、隣の大学生の会話が聴こえてきた。
カフェと名乗っているけれど、店内はファーストフード店のように小さなテーブル席が並べられている。
両隣の客の会話が、本を読んでいる自分の耳にも、否応なしに飛び込んでくる。

二人の女性は、同じ大学に通っている学生らしい。
ゼミの仲間たちの話やサークル活動の話で盛り上がっている。
どんな話題でだって盛り上がれる年代なのだろう。

話題は、ふと、ゼミの講師の話になった。
ゼミ生の女子学生が講師に御礼の手紙を書いたところ、自身のメールアドレスを記した返信が届いたのだという。
何でも相談してくださいと、講師からの手紙にはしたためられていたらしい。

「どん引きだよねー」と、彼女たちは笑った。
大学講師の心の奥深くに潜む下心に、彼女たちは実に敏感らしかった。
「やっちゃダメだよね、そういうこと」

昔、僕たちは手当たり次第に女の子たちの電話番号を訊ね、自分の電話番号を配って歩いた。
あるいは、そこから何かが始まるかもしれないと、淡い期待と幻想を抱きながら。
もちろん、彼女たちは、そんな時代があったことなんて何も知らない。

やがて、大学講師はすぐに彼女たちの関心から外れ、話題は人気ドラマの筋書きへと移っていった。
大学講師が、本当に下心を抱いていたのかどうか、それは誰にも分からないだろう。
確かなことは、講師のそんな行為を許すことができないという、彼女たちの潔癖な思いだけだ。

時代が変わった今、僕たちも現代風に生きなければいけないらしい。


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by kels | 2016-12-11 19:57 | 旧・札幌日和下駄 | Comments(0)
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