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僕が聴きたかったのは、「Don't Think Twice, It's All Right 」だった

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「これ、ボブ・ディランでしょ?」
「そう」と私は言った。
ボブ・ディランは『ポジィティブ・フォース・ストリート』を唄っていた。
二十年経っても良い唄というのは良い唄なのだ。
「ボブ・ディランって少し聴くとすぐにわかるんです」と彼女は言った。
「ハーモニカがスティーヴィー・ワンダーより下手だから?」
彼女は笑った。
彼女を笑わせるのはとても楽しかった。
私にだってまだ女の子を笑わせることはできるのだ。
「そうじゃなくて声がとくべつなの」と彼女は言った。
「まるで小さな女の子が窓に立って雨ふりをじっと見つめているような声なんです」
「良い表現だ」と私は言った。
良い表現だった。
私はボブ・ディランに関する本を何冊か読んだが、それほど適切な表現に出会ったことは一度もない。

「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」村上春樹(1985年)

ここ二週間、ボブ・ディランばかり聴いて過ごした。
デビューから最初の3枚の古いボブ・ディラン。
僕は古い時代のボブ・ディランが好きなのだ。

それでも、僕がボブ・ディランをこんなに聴くのは実に久しぶりのことだった。
仕事で疲れているから、こんなに優しい音楽ばかり聴きたくなるのだろうか。
朝目覚めた瞬間から夜眠る直前まで、僕はボブ・ディランのギターと声に慰められていた。

「相変わらず古くさい音楽聴いているな」と、みんなが笑った。
風に吹かれて、時代は変わる、激しい雨。
古くさい歌だっていうことは、もちろん僕も分かっていた。

僕が聴きたかったのは、「Don't Think Twice, It's All Right 」だった。
考えてみると十代の頃から僕は、何かあるたびにこの曲を聴いて、この曲に慰められていたような気がする。
時代は変わっても、僕はあまり変わらなかったらしい。

そんなボブ・ディランが、ある日を境に突然大ブレイクした。
「ボブ・ディランって、今聴くと新鮮だよね」と、みんなが言った。
僕は心の中で「ふざけんなよ」って本気で思った。

「くよくよするなよ、大丈夫だよ」と、ボブ・ディランが唄っていた。
by kels | 2016-10-15 06:44 | 旧・札幌日和下駄 | Comments(2)
Commented at 2016-10-18 00:38 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by kels at 2016-10-22 07:51
鍵コメ様、こんにちは。
僕も学生の頃から全然変わっていないような気がします(笑)
それがうれしいような気がしたりして。
これからもよろしくお願いいたします☆
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