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「シカとかキツネとか、この辺には多いです」と、タクシーの運転手は言った

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「さあ朝日だが――」
と老人が元気に帰って来たのは間もなくだった。
氏はその時の誘惑にも、到底勝つことはできなかったといっている。
同じ北海道へやられるのなら、なんでもかまわずもらってやれ、とそんなさもしい気持になったそうである。

「地図にない街」橋本五郎(1930年)

その日、僕は、苫小牧からほど近くにある、海岸沿いの小さな街にいた。
寂しいJR駅を出て、そのままタクシーに乗った。
行き先を告げると、タクシーはすぐに走り始めた。

タクシーは、ささやかな中心街を通り過ぎて、山道を走り始めた。
「意外と遠いんですね」とつぶやくと、運転手は笑った。
「なにしろ、去年はクマも出たからね」

僕は少しギョッとした。
山道とは言っても、そこには学校もあるし、実際に子どもたちが今も普通に歩いているのだ。
「まさか」と、僕は笑った。

そのとき、タクシーが急停車した。
道路のまん中に、大きな角を生やしたエゾシカが立ちはだかっている。
「鹿だ」と、運転手は笑った。

雄鹿は、僕たちを睨みつけるかのように、悠然と立ちつくしている。
鹿は一頭見つけたら、すぐ近くにも何頭かいる場合が多い。
すぐ横の笹薮を見ると、雌鹿が静かにたたずんでいた。

やがて、雄鹿はしなやかに跳ねると、薮の中へと消えていった。

「シカとかキツネとか、この辺には多いです」と言いながら、運転手は車を発進させた。
その瞬間、一匹のキタキツネがタクシーの目の前を、そそくさと横切っていった。
「なるほど」と、僕は言った。

北海道って、やっぱり広いなあと、僕は思った。


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by kels | 2016-04-23 20:13 | 旅行 | Comments(0)
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