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有島武郎の「小さき者へ」は、切なすぎると同時に美しすぎる作品だ

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いよいよH海岸の病院に入院する日が来た。
お前たちの母上は全快しない限りは死ぬともお前たちに逢わない覚悟のほぞを堅めていた。
二度とは着ないと思われる――そして実際着なかった――晴着を着て座を立った母上は内外の母親の眼の前でさめざめと泣き崩れた。
女ながらに気性の勝ぐれて強いお前たちの母上は、私と二人だけいる場合でも泣顔などは見せた事がないといってもいい位だったのに、その時の涙は拭くあとからあとから流れ落ちた。

「小さき者へ」有島武郎(1918年)

最近は、「小学生のボクは鬼のようなお母さんにナスビを売らされました」という名前の絵本が売れているらしい。
病気だった母親が、自分の泣き顔を見せたくないために、小学生の子どもになすびを売りに出かけさせるという話だ。
もちろん、作者がなすび売りの理由を知ったのは、母親の死後のことである。

どんな親でも、子を思う心に変わりはない。
小さな子供を残して逝かねばならない母の心は、どれだけ無念のことだっただろうか。

有島武郎の「小さき者へ」には、幼い子どもたちを残して死んでいく母親の無念が、父親である有島の筆を通して、次から次へと溢れ出ている。
切なすぎると同時に、美しすぎる作品だ。

札幌、東京、鎌倉と、病気の妻を連れて移転した有島の生活を、作品では知ることができる。
幼い子ども3人を連れた家族の絆の強さが、文脈のあちこちから伝わってくるが、病魔は容赦なく妻の命を切り刻んでいく。
壮絶であるが故に、すべてを子どもたちに伝えたいと、作者は考えたのだろうか。


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by kels | 2016-01-24 07:23 | 文学 | Comments(0)
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