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冬の北海道を描いた作品として、有島武郎の「カインの末裔」は、間違いなく代表的な作品だ。

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北海道の冬は空まで逼っていた。
蝦夷富士といわれるマッカリヌプリの麓に続く胆振の大草原を、日本海から内浦湾に吹きぬける西風が、打ち寄せる紆濤のように跡から跡から吹き払っていった。
寒い風だ。
見上げると八合目まで雪になったマッカリヌプリは少し頭を前にこごめて風に歯向いながら黙ったまま突立っていた。
昆布岳の斜面に小さく集った雲の塊を眼がけて日は沈みかかっていた。
草原の上には一本の樹木も生えていなかった。
心細いほど真直な一筋道を、彼れと彼れの妻だけが、よろよろと歩く二本の立木のように動いて行った。

「カインの末裔」(1917年)有島武郎

冬の北海道を描いた作品として、有島武郎の「カインの末裔」は、間違いなく代表的な作品だ。
もちろん、この作品は、ひと冬の物語ではない。
農民の暮らしを、季節の移り変わりの中で描いてみせたものだ。

それでも、この小説は、読者に厳しい冬を強く印象付ける。
それは、冬で始まり、冬で終わる、絶妙の構成によって計算されたものであるからだ。
作者は、北海道の冬を、作品の中で非常に効果的に活用している。

ある農場に、新しい移住者がやってくる。
夫婦と赤ん坊、そして馬。
それは、厳しい冬の北海道でのことだった。

破天荒な主人公は、周囲の反感を買いながらも、自分なりの農業を成功させていく。
他人の女房を寝取り、小作料も納めず、好きな酒を飲んだ。
しかし、人生は、自分の思いどおりになるものではない。

赤ん坊が病気で死に、馬は草競馬で大きな怪我を負った。
そして、農場主の豊かな暮らしと、自分の貧しい暮らしとのあまりの格差に打ちのめされる。

やがて、夫婦は農場を出た。
赤ん坊と馬の姿もなく。
それは、厳しい冬の北海道でのことだった。

主人公に決して感情移入できないということが、この小説の特徴だ。
一方で、人は誰しも、破天荒で野蛮な自分自身というものを抱えているものである。
「カインの末裔」というタイトルが、作者の意図を何よりも示しているのかもしれない。

あまりに定番すぎるけれど、冬になると読みたい小説のひとつである。


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by kels | 2016-01-16 06:51 | 文学 | Comments(0)
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