<< どんなに生活が忙しくても、本を... 毎年思うことは、夏の始まりは夏... >>

昔の恋人のことも、好きだった女の子のことも、記憶は不鮮明で、思い出だけが鮮やかだ

b0103470_184283.jpg

僕は恋人のことを考えた。
そして彼女がどんな服を着ていたか思い出してみた。
まるで思い出せなかった。
僕が彼女について思い出せることは、全部漠然としたイメージだった。
僕が彼女のスカートを思い出そうとするとブラウスが消え失せ、僕が帽子を思い出そうとすると、彼女の顔は誰か別の女の子の顔になっていた。
ほんの半年前のことなのに何ひとつ思い出せなかった。
結局、僕は彼女について何を知っていたのだろう?

「午後の最後の芝生」村上春樹(1982年)

どんなに頑張っても、思い出せない記憶がある。
同時に、どんなに忘れようとしても、忘れられない記憶がある。
記憶というのは、不公平で、とても扱いにくいものなのだ。

時々、こんなことを考えた。
今この瞬間のことを、僕は永遠に忘れることはないだろう、と。
だけど、記憶はちゃんと失われていて、多くの瞬間を、僕が思い出すことはない。

記憶が鮮明でない分だけ、思い出は僕の中でしっかりと形づくられていく。
僕にとって都合の良い、僕だけの思い出のままで。
そんな思い出たちが、今の僕を支えていることも、また確かなのだろう。

昔の恋人のことも、好きだった女の子のことも、記憶は不鮮明で、思い出だけが鮮やかだ。


にほんブログ村 地域生活(街) 北海道ブログ 札幌情報へ
にほんブログ村
↑↑↑↑↑
「にほんブログ村」に参加をしてみました。
1日1回のクリックをお願いいたします!
by kels | 2015-07-26 18:22 | 旧・札幌日和下駄 | Comments(2)
Commented by マッスー at 2015-07-27 21:59 x
いつもすいません。この世界観はノルウェイの森の直子のイメージに繋がるんですよね。好きだった彼女の面影を思い出せない今の自分を攻めるふりをする。みたいな。この感覚って男特有だそうです。私は新宿在住ですので、よくDUGの前をとおります。村上春樹のファンの溜まり場ですよ。
Commented by kels at 2015-07-27 22:27
マッスーさん、こんにちは。
男性特有の感覚って、分かるような気がします。
東京の村上春樹散策、うらやましいです!
<< どんなに生活が忙しくても、本を... 毎年思うことは、夏の始まりは夏... >>