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「車粉」という言葉が通用しない世の中になってしまった

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「車粉」という言葉が通用しない世の中になってしまった。
突然「しゃふん」と言われても、それが「車粉」のことだと思い至るまでに時間がかかるかもしれない。
「車粉」は既に「馬糞風」と同様に、世の中から姿を消してしまった、札幌の春の風物詩である。

一般家庭にも自動車が普及して馬車・馬橇が姿を消した頃、春の風物詩である「馬糞風」も姿を消した。
そして、馬糞風に変わって新たな春の風物詩として登場したのが「車粉」である。
車粉が街を白く覆う頃、札幌の街は本格的な春を迎えると言われた。

これも既に消えた言葉だけれど、かつて冬の自動車は、みんなスパイクタイヤを付けていた。
凍結路面でスリップしないように、タイヤに無数の金属ピンが埋め込まれていたのだ。
このピンが、雪や氷に突き刺さって、冬のスリップを絶妙に防いでくれた。

春になって、雪が溶け、アスファルトの路面が姿を見せるようになると、今度は、このスパイクタイヤがアスファルトの道路を削って、街中に小さな削りカスを撒き散らした。
これが車粉と言われるもので、ひどいときには、遠くの景色が霞んで見えないくらいに、街全体が車粉の白い空気で覆われたという。

もちろん、人間の健康にも良くないわけで、車粉は北海道の新しい公害として、大きな社会問題になった。
現在は、スタッドレスタイヤの普及によってスタパイクタイヤも減少し、自動車が春先にアスファルトを削って走ることもなくなってしまった。
一つの公害が街から姿を消したのと同時に、春の風物詩であった「車粉」という言葉自体も、姿を消してしまったのだろう。

スパイクタイヤからスタッドレスタイヤへの転換が進んだのは1980年代後半から1990年代にかけてのことだから、たかだか20年くらい前のことである。
20年で一つの風物詩が完全に忘れ去られてしまうのだから、時の流れというものは本当に早いものだと思う。
馬糞風も車粉もない清潔で美しい街で生きる僕たちは、昔の人たちもずっと幸せな暮らしをしているのだろうか。


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by kels | 2014-04-08 21:20 | 観光・風物詩 | Comments(0)
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