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1999年の「FAB cafe」の誓い

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「カフェの話」という一冊の本がある。
2000年にアスペクトから出版された本だ。
タイトルのとおりに、カフェの話がたくさん収録されている。

カフェが好きだから、カフェに関する本をたくさん読んだ。
もちろん、この本も好きだった。
本の中では、個性的なカフェがたくさん紹介されている。

札幌のカフェとして「FAB cafe」が紹介されていた。
「十一月」オーナーが、まだカフェのスタッフとして写真に写っている。
なにしろ、10年以上前に出版された本なのだ。

いろいろなカフェのオーナーの話が掲載されている。
起業に至る苦労やカフェへの思い入れ、将来に対する夢。
もちろん「FAB cafe」オーナーの談話も、そこにはある。

自分で毎日のように自転車で札幌の都心を回っていたんです。
そしたらある日、奥に釣り具コーナーがある古い不思議な喫茶店が、店じまいで次の借り手を求めていた。
狸小路のはずれ。
おじいちゃんおばあちゃんがやっていた店で、もうリタイアするところだったのでしょう。
ウワッ暗くて汚い!というのが第一印象。
喫茶店になる前はサパークラブだったそうで、その遺産だと思うけれど、奥の壁には、堂々たる鹿の剥製の首がニョキっと飾られていました(笑)
でも建物自体はしっかりしていたし、広さもある。
場所もまあ許せるというか、というギリギリのところで、エイヤっと決めました。
ええ、人通りは少なかったですけどね(笑)
今よりもさらに。

僕は北海道小樽市生まれ。
1970年代半ば、高校生の頃ですが、小樽に面白い喫茶店がいろいろ出てきたんです。
明治、大正時代に建てられた石造り倉庫を改造した『叫児楼』とか『海猫屋』など。
ちょうど小樽運河の保存運動が市民の間で盛り上がった時期でもありました。
ラグビーの部活が終わったあとなど、よくそうしたところで仲間とたむろしていたものです。
狭くて薄暗い雰囲気が、なんか隠れ家にいるような、いい気持ちにさせてくれたんですね。
カッコイイつもりになってタバコを吸ったり(笑)
大学生活を送った札幌でも『仏蘭西市場』とか『珈琲野郎』など、いい喫茶店があったなあ。
『珈琲野郎』は今もありますけど。
カフェという言葉も使われていませんでしたし、インテリアがどうしたとか、音楽やコーヒーの味がどうしたというより、とにかくいい喫茶店のいい雰囲気に惹かれていただけ。
でも、ほんとに好きでしたよ。
自分がカフェを作ることになった根っこには、そんな体験があるのかもしれない。

Fabulous(ちょっとすてきな)cafe、という意味です。
お客さんに愛称で呼んでほしかったので「FAB」にしました。
いったいどんな店を作ろうか、具体的に進めていったとき、次のような大枠を決めました。
 ・明るくて清潔で誰もがくつろげる店
 ・食べ物にも力を入れる。調理は自分たちでやる。
 ・紅茶とかテーブルウェアなどの物販もやる。
 ・フライヤーとかポスターなんかを気軽に置けるようにする。
 ・パーティーやワークショップなど、ちょっとしたイベントもやる。
そんなところかな。

まだ準備を始めたばかりの頃、円山の家具のアンティーク・ショップで、どっしり大きくて、たっぷり入る本棚を見つけました。
後悔しないようにまず買っておこう!と8万円で買いました。
ところが、やはり普通の家に運び込むには大きすぎて。
吊り上げて入れることになり、ひどい目にあいました(笑)
家具はね、アンティークを基本にしようと最初から思っていました。
古くて人間がずうっと使い込んだものには、新しいものには絶対出せない色や質感があります。
シンプルな中にぬくもりのある雰囲気を出すために、他の選択はなかったですね。

メニューは、1年間、自宅で試行錯誤を重ねました。
ボイルの具合から基本のソースなど、ほとんど独学だけれどこだわったつもりです。
「カフェで食べるイタリアン」をめざしました。
次に、コーヒー。
札幌は、コーヒーのレベルがとても高い街なので、レギュラー、エスプレッソとも、豆の選定には気を使いました。
それと、紅茶です。
紅茶を揃えると女性に訴えることができるし、ハーブティーなども含めて種類がたくさん出せます。
メニューに奥行きがだせますね。
それと、物販のラインアップに紅茶関連のグッズが揃えやすい。
紅茶の講習会なんかもやってみたいと思いました。
はい、次はデザート。
家内の担当で、毎日焼き菓子を6種類くらい作っています。
これは、店全体に通じることですが、完成度を売り物にするのではなく、飾らずに、気持ちよく、ありのままを、という精神です。
なんでも、手作りのできたてのものを楽しんでほしい。

いろんな分野でトレンドやブームは意識しますが、でも、それを追いかけるつもりはない。
疲れてしまいます。
現代まで生き残った古いものが持っている、ベーシックで、シンプルで、ぬくもりのある世界ってあるでしょう。
それを大切にしていきたい。
この店の壁のひびや汚れや穴が、時間が経つにつれてもっといい味を出してくれます。
そういうことに、意味や価値を持っていたいんです。
店には、自分たちが生きてきた時間や道のりが出るような気がします。
これは怖いことでもあるけれど、この空間とサービスを街の人々に提供していく以上、店はある種の自己表現とも言えるでしょう。
でもそれは、決して自己満足ではない。
そうあってはならないと思っています。

「FAB cafe」の開店から、既に10年以上の時が過ぎた。
オーナーの望んだとおり、店は札幌の老舗カフェとなりつつある。
そして、店の壁のひびや汚れや穴は、「FAB cafe」とオーナー夫妻の歴史を今日も刻み続けている。



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by kels | 2013-09-15 21:43 | カフェ・喫茶店 | Comments(2)
Commented by サラリーマンレポート at 2013-09-16 14:20 x
オーナーのさりげなくも妥協のないこだわりが素敵です。
FAB cafe は横を通ったことはあるのですが、出張サラリーマンにはちょっと敷居が高い気もして、なかなか扉を開けられません。
FAB cafe が、FAVorite cafe になる様に、札幌に溶け込めるといいのですが。
Commented by kels at 2013-09-17 22:26
サラリーマンレポートさん、こんにちは。
「FAB cafe」は意外と敷居が高くないですよ。
オーナーは「サラリーマン、来ないかなあ」とかつぶやいているし。
近所の古本屋のオヤジが、日に何度も来店しては、コーヒーを飲み、食事をしていきます(笑)
次回は、ぜひチャレンジしてみてください!
FAVorite cafe、いいですね~☆
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