<< 骨董モール~A to Z~宮越... 北海道新幹線よりも、在来線の雪... >>

「こどもがまだ食ってる途中でしょうが!」を分析する

b0103470_16411786.jpg

テレビドラマ「北の国から」の有名なシーンといえば、夜のラーメン屋さんで、五郎さんが「子どもがまだ、食ってる途中でしょうが!」と店員を怒鳴るシーン。
泥の付いた一万円札とこのラーメン屋さんは非常に人気があって、この年末年始だけで何度もパロディ場面を目にした。
みんな、いったいどれだけ「北の国から」が好きなんだろうと(笑)

ところで、この台詞はとても有名になったけれど、その前後の場面というのは、意外と知らない人も多いのではないだろうか。
この有名なセリフは、「北の国から '84 夏」のラストシーンに登場する。
物語では、五郎の丸太小屋が全焼してしまうという、ラーメン屋よりも極めて重要な場面がある。

実は、この火事は、純のささいな不注意が原因となって発生するのだが、純はそのことを周囲の大人たちに告げることができず、結局、五郎の家に居候している正吉がすべての罪を被ってしまう。
正吉は、その他の場面でも、純の心の闇の部分を補おうとするが、純は自分の心の闇の部分を認めようとはしない。
そのことに対して、自分がきちんと向き合うことができるのは、親友であった正吉が彼の家を離れた後のことだった。

物語の最後の場面で、純は自分の心の中の闇の部分を五郎に告白する。
その舞台が件のラーメン屋だった。
自分の行動の軽率さに号泣する純は、目の前のラーメンを食べることができない。
そのラーメン丼を無表情な店員が片付けようとしたことに、五郎は激怒し、かの有名な台詞が飛び出す。

自分の内面をさらけ出すことによって、純はひとつ大人への階段を上った。
そして、少年の告白を正面から受け止めることによって、五郎もまた、確かに父親としての階段をひとつ上ったことだろう。
床の上に落ちて割れたラーメン丼は、二人が壊した古い自分自身であったかもしれない。

今、このシーンは笑いのネタとして日本社会の中に定着した。
そもそも笑いの対象となる場面ではなかった、このシーンが、どうして笑いのネタとして定着したのだろうか。
僕は、そうした現象にこそ、人々がこの場面から受けた衝撃の大きさが隠されているのだと思う。

壊れたラーメン丼の中に、人々は自分自身の心の闇を見たのだ。
告白することができないままに抱え続けてきた心の闇を、人々は五郎の叩き壊したラーメン丼の中に見つけたのだ。
だからこそ、人々は、それを笑いの場面へと転換することによって自分自身の闇を隠し続けようとしたのではないか。

ストレートな感情表現をまっすぐに受け止めず、笑いへと変換して受け流すことを、1980年代以降の日本人は身に付けていた。
その象徴こそが「子どもがまだ食ってる途中でしょうが!」だったのではないか。

ぶつけようのない五郎の苛立ちは、あるいは自分自身への苛立ちだったかもしれない。
きっと、僕らはこの先もずっと、この言葉を叫び続けることだろう。
何かを乗り越えようとするたびに、新しい階段をひとつ上ろうとするたびに。

「こどもがまだ食ってる途中でしょうが!」は、新しい次の展開への可能性をもたらす言葉なのだ。


にほんブログ村 地域生活(街) 北海道ブログ 札幌情報へ
にほんブログ村
↑↑↑↑↑
「にほんブログ村」に参加をしてみました。
1日1回のクリックをお願いいたします!
by kels | 2013-01-05 17:14 | 随想・日記 | Comments(7)
Commented by jh8fht at 2013-01-06 12:54 x
このシーンは、強烈に覚えています。
純が正直に言ったこと!そして五郎がやさしく受け入れた・・
その葛藤が親子の距離を一歩近づけた瞬間でもありました。
Commented by kels at 2013-01-06 21:24
jh8fhtさん、こんにちは。
そうそう、黒板家の絆がまた一つ強くなったと感じさせる一瞬でしたよね。
直後のラストシーンが、すごくあっけなく感じたような気がします(笑)
Commented by at 2013-07-07 08:55 x
閉店時間だったしょ
Commented by 無名子 at 2014-09-21 08:17 x
あの後、五郎さんは正吉に謝ったんだっけ?
記憶に無いのだが。
もし謝っていないのだとしたら、
keisさんの仰る通り、自分自身へのいらだちであり、
己を含めて、これからもごまかし続けようという
後ろめたさゆえの行動にも思える。
Commented by kels at 2014-09-21 18:11
無名子さん、こんにちは。
僕もストーリーは忘れてしまいました(笑)
物語よりも台詞の方が有名になってしまいましたね☆
Commented by 名無し at 2014-10-07 14:56 x
良い文章書きますね
Commented by kels at 2014-10-07 21:23
名無しさん、ありがとうございます☆
<< 骨董モール~A to Z~宮越... 北海道新幹線よりも、在来線の雪... >>