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「FAB cafe」とデューク・ピアソン

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日曜日の夜、僕は狸小路の「FAB cafe」にいた。
カフェは、満席というわけではなかったけれど、二人連れの女の子やカップルで適度に賑わっていた。
いつものテーブル席に座って、オリジナル・ブレンドを注文し、書棚から雑誌を一冊抜き取ってページをめくる。
何度も何度も繰り返されてきた、それは個人的なルーチンだった。

ふと、気が付くと、何組かの客がいなくなっていて、店内は不思議な静寂に包まれていた。
それは、決して完璧な静寂ではなかった。
奥のソファ席で話し込んでいるカップルの声は、確かにこちらまで響いていたし、スタッフの女の子が食器を洗うガチャガチャとした音は、絶え間なく鳴り響いていた。
けれども、そうした効果音が、実に都会的な静寂を確保していることも、また確かだった。

僕は、雑誌から目を離して、ぼんやりと店内の風景を眺めていた。
白い扉の向こう側の暗闇、木のテーブルと布張りの椅子、トイカメラやコーヒーカップの並んでいる棚、沼田元気の写真ポスター、そういったものを特に観察するともなく、ただぼんやりと眺めていることで、僕の気持ちはとてもリラックスしていくのが分かった。

いつの間にか、BGMは、デューク・ピアソンの古いジャズボッサに変わっていた。
良いカフェで良い音楽に巡り合えたときほど、幸せな瞬間はない。
カップ一杯分のコーヒー代だけで、これだけ満ち足りた時間を提供してくれる。
良いカフェというのは、そのことを明確に示してくれるものだ。

やがて、大人数のグループ客が来店して、僕の中の静寂も幕を閉じた。
そして、それもまた、街のカフェというものだ。
残っていたコーヒーを飲み干して、僕は店を出た。
雨混じり夜道を歩きながら、デューク・ピアソンのピアノが、いつまでも頭の中で繰り返されていた。








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by kels | 2012-11-05 21:30 | 旧・札幌日和下駄 | Comments(4)
Commented by appletree1217 at 2012-11-06 07:31
kelsさん、こんにちは。
ご無沙汰しております。
ああ、kelsさんの空気だな~、としみじみ読ませていただきました。
写真がどれもこれもすごくいいですね。

結局息子がいる間に、札幌には一度も行けなかったのですが、
こんなところで青春してるんだと、
kelsさんのブログでこっそり体験してる気分でした。

生活がだいぶ落ち着いたので、
これからはまたちょくちょく来させてもらいますね。
ではでは。


Commented by kels at 2012-11-06 21:36
appletree1217さん、こんにちは。
本当にご無沙汰しておりました。
ぜひ、これからもよろしくお願いいたします☆
Commented by hendrickson-pink at 2012-11-10 13:15
こんにちは、手前札幌ではないのですが道内です。札幌に行ったなら「Fab cafe」は割と立ち寄ります。「Duke Pearson」も イイですねよね、 どちらも僕は好きです。http://hemings.exblog.jp/18021235/
Commented by kels at 2012-11-10 23:43
hendrickson-pinkさん、こんにちは。
その二つが合わさると、これはなかなかのものだと思います(笑)
カフェのBGMって、一期一会の部分があるので、巡り合わせを大切にしたいと思っています☆
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