鍋パーティ

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学生時代は、一人暮らしの連中が多かったから、都合を付けてはみんなで一緒の食事をした。
寒い冬の夜には、誰かが「鍋でも食べたいなあ」と呟くたびに、僕らは肉や魚や野菜を買いに出かけ、ささやかな鍋料理で酒を飲んだ。
鍋は料理が簡単な寄せ鍋や水炊きになることが多かった。
料理の得意な女の子が入ったとき、突然豪華な鍋物が登場することもあったけれど、それは極めて稀で、多くの場合、僕らは庶民的でささやかな鍋物を食べたし、実際それで満足することができた。

その年のクリスマスの夜、仲間たちが集まって鶏の水炊きを食べた。
世の中は、バブル景気で浮かれている頃で、誰もが贅沢なクリスマスの夜を過ごすことが人生で一番大切なことだと信じていた時代のことだ。
男女数名が集まって、鍋をつついているクリスマスがあるなんて言っても、誰も信用しなかっただろう。

それでも、その夜の鍋は、僕たちにとって忘れられない思い出となった。
僕にとっては、長い入院生活から退院したばかりのクリスマスだったし、彼女にとっても、僕らとともに過ごした最初で最後のクリスマスとなったからだ。
それから2ヶ月後に、彼女がいなくなってしまうことなんて誰も予想せず、僕らはシャンパンを空け、卒業後の夢を語り明かした。

いつの間にか酔いつぶれて、みんなで雑魚寝した翌朝、僕はすぐ横で眠っている彼女の小さな寝息で目を覚ました。
外はまだ暗く、窓の外には月が見えた。
テーブルの上にこぼれたシャンパンが、安っぽいアルコールの匂いを漂わせていた。
寒さに体を丸めながら眠っている彼女に毛布をかけながら、僕はぼんやりと将来のことを考えた。
あのとき、僕はどんな将来を思い描いていたのだろう。
何ひとつ思い出せはしないけれど、いつかみんなバラバラになってしまうのだという、寂しい予感だけは間違ってはいなかった。

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by kels | 2010-12-13 21:43 | 旧・コラム・随想 | Comments(0)

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