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海辺の街

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新しい街に到着したのは、10月半ばの曇り空の夕方だった。
旭川からオホーツク海に向かって走ったのだけれど、道はどこまでも単調で、走っても走っても風景が変わらない。
やがて、山を越えるために峠に入り、長い長いトンネルを抜けて、少しずつ山を下りた。
山を下りてしまうと、突然気温が低くなったような気がした。
ようやく海が見えてきた頃、重たい曇り空の下に、僕の住むべき街があった。
何という重たい雲なのだろうと思った。

その街に到着して、僕が一番初めにやらなければならなかったことは、ストーブを買ってきて、新たに借りた部屋に取り付けることだった。
街の小さな商店街には、小さな電気店がひとつあり、そこにも石油ストーブが置かれていた。
ただし、商品は極めて少なく、ほとんど選択の余地などない中で、僕は新しいストーブを購入しなければならなかった。
商店街には、一通りのものは揃っていたけれど、多くの北海道の田舎町がそうであるように、この街でも商店街は元気がなくて、その上、殿様商売だった。
店に入れば、売ってやると言わんばかりの店員が現れて、無愛想な商売をした。
買い物をして、「ありがとうございました」を言わない店さえあった。
街の書店で雑誌を探していると、「そんなものないよ」と冷たくあしらわれた。
何もかもが札幌とは違うのだと、思った。

すぐに、長い冬が始まった。
冬の訪れは道央よりも一ヶ月は早く、そして、冬の終わりは一ヶ月遅かった。
初めての長い冬を、僕はどうやって過ごしたのか記憶にない。
深い雪と氷の中で、ひたすらに本を読んだり、毛鉤を巻いたり、紅茶を沸かしたりして、孤独で長い冬を過ごしたのだろう。
時折、札幌の仲間たちと電話で話をした。
札幌からの距離以上に、遠い声がした。


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by kels | 2010-10-01 21:10 | 旧・札幌日和下駄 | Comments(0)
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