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匂いガラス

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1986年、「匂いガラス」というドラマがNHKで放送された。
普段ドラマなんかほとんど見ないのに、仙道敦子が主役だからという理由で、何となくテレビを見ていた。
唐十郎の原作だった。
ドラマの中に、こすると良い匂いがするというガラスの破片が出てきて、それが「匂いガラス」だった。
そのときは、何も思わなかった。

数年が過ぎて、そういえばと思った。
あのとき、テレビドラマの中に登場していた「匂いガラス」のことを思い出した。
あの「匂いガラス」は、どこにあるのだろうと。
あの「匂いガラス」は、どんな匂いをさせているのだろうと。
古道具屋を回りながら、「匂いガラス」なるものを探したけれど、今までに見つかることはなかった。

「匂いガラス」は、昭和20年代に少年時代を過ごした人たちにとっての共通体験であるらしい。
その本質は、B29を始めとする戦闘機の防風ガラスで、墜落機の機体などから入手されたものが、露天商などを経て、少年たちの手に入ったと推測される。
どこかの工場で生産されたものではないから、終戦から60年以上が経過している今、あの「匂いガラス」を手に入れることは、おそろしく困難である。

考えてみれば、ただの墜落機の破片だ。
ただ持っているだけでは、おもしろくもないに決まっている。
敗戦直後で、人々がまだ焼け跡の中で生活していた時代、少しの工夫と豊かな知恵で、様々な遊び道具を考えていた人たちが、ガラスの破片の利用を思いついたものだろう。
誰かが、ガラスをこすると良い匂いがすると言い始めた。
「匂いガラス」という都市伝説は、少年少女たちの世界で幻想的な遊び道具として広まっていったのである。

幻想でも良いから、「匂いガラス」を手に入れたい。
その気持ちに変わりはない。
敗戦後の子どもたちがこすり続けたガラスの破片の匂いを、一度でいいから嗅いでみたい。
今や伝説と化した「匂いガラス」を、僕は今も求め続けている。


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by kels | 2010-09-28 21:54 | 日記 | Comments(7)
Commented by イシダコウ at 2010-09-29 07:30 x
匂いガラス…そそるネーミングですね。匂い消しゴムは、小学生の頃に大流行したけど。どんな匂いなのかな? そして仙道敦子!懐かし過ぎる!大きな目とおかっぱ頭、ポカリスエットのCM、「セーラー服反逆同盟」(知ってるかなァ笑)…この二つの組み合わせに、朝からくすぐられました
Commented by イシダコウ at 2010-09-29 07:43 x
唐十郎原作のNHKドラマつながりで、僕も一作思い出しました。「安寿子(やすこ)の靴」です。ストーリーは忘れたけど、モチーフが「安寿と厨子王」。記憶の隅に今もあるのは、安寿子を演じていたのが、小林麻美だったから。川の中から、ワンピース姿の彼女がしどけないポーズで現れてくる、というシーンのみ覚えています(笑)。
Commented by kels at 2010-09-29 19:50
イシダコウさん、こんにちは。
「セーラー服反逆同盟」、ちゃんと見ていましたよ(笑)
中山美穂が主演の(初回と最終回しか出なかった)

「安寿子の靴」、僕も観ました。
唐十郎シリーズはおもしろかったですね☆
Commented by イシダコウ at 2010-09-30 00:53 x
出てましたねぇ、中山美穂。薔薇投げて敵を倒していたっけ(笑)。 仙道敦子で訂正を。ポカリではなくan(アルバイトニュース)のCMでした☆
Commented by kels at 2010-09-30 23:02
イシダコウさん、こんにちは。
CMの方は全然記憶にありませんでした。
「浅田飴」のパッションとかはシングルレコードも持っているのですが(笑)
Commented by イシダコウ at 2010-10-01 00:30 x
anのCMは、すし詰めのエレベーターの中で、「職業選択の自由、アハハ~ン♪職業選択の自由、アハハ~ン♪」と小声で口ずさむ彼女と、怪訝そうにそれを見る高橋幸宏…そんなシチュエーションだったと思います。バックには、シーナ&ロケッツがバリバリのロック調で、やはり「職業選択の~」を シャウトしてました。 アルバム出してたんですねえ。最近はどうしてるのかな?
Commented by kels at 2010-10-01 21:18
イシダコウさん、こんにちは。
結婚した後は、あまり見ていないかも、ですね☆
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