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真夜中のタクシー

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午前1時の石山通りを、無口なタクシーに乗って自宅へと帰る。
気が付くと、タクシーと並んで走る1台のスカイライン。
真っ赤な自動車のハンドルを握る若い男は、身振り手振りで助手席の女の子との会話に夢中だ。
並走するタクシーの後部座席から、ぼんやりと見ている男のことなんかに気が付くはずもない。
僕には、彼が今何を夢中になって隣の女の子に話をしているのか、なんとなく分かるような気がした。
真夜中の国道を走る彼の姿は、紛れもなくあの頃の僕自身の姿でもあったからだ。

そう、あの夜も、僕はこの道を南に向かって走っていた。
彼女の気を引くための、くだらないおしゃべりをいくつも用意しながら。
沈黙が怖くて、BGMの空白にさえ怯えるように、僕らは会話が途切れることのないように注意した。
あのときの僕が、タクシーの窓ガラス越しに、あの頃と同じようにハンドルを握りしめていた。

深夜のタクシーは、時に不思議な幻を見せてくれる。
それは、どこか懐かしくて、どこか切ない、まるで色褪せたカラープリントみたいな幻だ。


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by kels | 2010-06-09 19:15 | 日記 | Comments(0)
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