100万人都市という言葉には、190万人都市という言葉以上に、未来への明るい希望があった


100万人都市・札幌という言葉は、既に懐かしいものになった。
なにしろ、現在札幌の人口は190万人であり、およそ200万人都市と言っても過言ではないのだから。
100万人を超えたと言って騒いでいた時代が嘘のようである。

札幌の人口が100万人を超えたのは1970年のこと。
1968年に創設100年を迎え、1972年の札幌オリンピック開催を目前に控えていた、まさしく激動の時代のことである。
100年だ、100万人だ、オリンピックだと、話題には事欠かない時代だった。

もちろん、日本社会全体が高度経済成長の時代である。
その日本にあってさえ、札幌の盛り上がり方は、今にして振り返ってみても尋常ではなかっただろう。
誰もが明るい未来を信じていたし、輝く将来を信じてやまなかった。

それにしても、明治初期に生まれた札幌が人口100万人を超えるまでに要した時間は約100年である。
その後、50年も経ずして、当時の2倍近い190万人を超えているのだから、100年以降の伸び率の著しいことがよく分かる。
原始林を開拓するのに100年を要したけれど、都市の形が整った後の成長には、さほどの時間を要しなかったということなのだろう。

果てしなく長い平成不況の中で、人口を論じる時代ではなくなった。
日本社会全体で人口減少問題が深刻化している世の中である。
大切なことは人口だけではないということに、世の中が気付き始めている。

僕が知りたいのは、人口が100万人を超えた時代の、この街の熱気のことである。
あの頃の人々が抱いていた熱気やエネルギー、明日への夢や希望は、一体どこへ行ってしまったのだろうか。
僕たちは途方もない忘れ物を、どこかの時代でしてきてしまったような気がする。

100万人都市という言葉には、190万人都市という言葉以上に、未来への明るい希望があった。


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# by kels | 2015-03-26 19:41 | 札幌のこと | Trackback | Comments(0)

今、僕の集めているものは、紺色の無地のネクタイと白いシャツ。


フランスの人たちはたった10着の服さえあれば、幸せな暮らしを過ごすことができるらしい。
いいなあ、こういうミニマムな考え方って。
僕の憧れは物を持たない、シンプルでミニマムな生活。

だけど、現実世界の中の僕は、いつでも何かを集めている。
収集癖という名前の病気持ちなのだ、きっと。
何かに固執しているわけではなく、何かを集める行為に取り付かれている。

今、僕の集めているものは、紺色の無地のネクタイと白いシャツ。
そう言うと、みんな笑うのだけれど、紺無地のネクタイと白いシャツは、僕にとって、毎日の暮らしに欠かせないものだ。
それが「集めるべきもの」なのかどうかはともかくとして。

紺色の無地のネクタイは、ネクタイを手がけているブランドであれば、おおよそどんなブランドからも発売されているだろう、永遠の定番のネクタイだ。
ブランドが最初に作るネクタイであり、誰もが最初に絞めるべきネクタイでもある。
一口に紺無地と言っても、グラデーションは実に幅広く、デザインは無限だ。

白シャツについても同じことが言える。
白シャツこそ永遠にして最大のスタンダードであり、オシャレの始まりにして終わりでもある。
襟の形やシェイプ、ボタン、素材感など、こだわればキリのないアイテム、それが白シャツなのだ。

などという勝手な理屈を見つけてきては、せっせと紺無地ネクタイと白シャツを買い集めている。
そして、僕は毎日、白いシャツに紺無地のネクタイを締めて出かけ、みんなは、僕がいつも同じ格好をしていると信じている。
今では、白いシャツと紺無地のネクタイが、僕の制服だ。

こんな暮らしも、ある意味ではシンプルでミニマムな暮らしなのかもしれない。


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# by kels | 2015-03-25 21:44 | 雑貨・アンティーク | Trackback | Comments(0)

「10着しか服を持たない」というミニマムな考え方が、僕は好きだ


「フランス人は10着しか服を持たない」という本を読んだ。
ファッション的な内容なのかと思ったら、フランス人のライフスタイル観がメインで、その中でファッション観についても触れているという構成だった。
まあ、「フランス人の暮らし方ってこんなにすごい!」というスタンスだけれど、それはそれで楽しく読むことができた。

大事なことは、どこの国にも特有の文化があり、特有のライフスタイル観があるということ。
そして、どんな文化やライスタイル観にも、見習うべき点は必ず存在する。
アメリカや日本がダメで、フランスが素晴らしいということではなくで、フランス人の良いところを自分たちの生活の中にも取り入れていこうということだと思う。

そもそも「10着しか服を持たない」というミニマムな考え方が、僕は好きだ。
それは、いつでも同じ格好をしているということではなくて、少ない服をどのように工夫して着回すかという発想につながる。
数を自慢するよりも工夫を誇れる生き方の方が、絶対にカッコイイに決まっている。

ところで、この春の僕はフレンチ寄りになっていて、週末はざっくりとした服装で過ごすことが多くなった。
もともとナチュラル系が好きだから、「ざっくり」にはまると抜け出せないような気がする。
「ざっくり」だけれどルーズになりすぎていないのが、何となくフレンチ。

せっかくだから、この春は10着の洋服に挑戦してみようか☆





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# by kels | 2015-03-24 19:48 | 本・雑誌・古書 | Trackback | Comments(0)

彼女は「ブクブク、ペッしてくださいねー」と言った


街の歯医者を諦めて、僕は近所の歯医者に行った。
スーパーと同じビルに入っている、庶民的な歯医者だ。
もう夕方だったけれど、院内は子供たちの声で賑わっていた。

街の歯医者と同じことを問診表に書いて、僕は診察室に入った。
歯科衛生士の若い女性が、入念に歯をチェックしている。
やがて、歯医者が現れて、僕の口の中を点検し始めた。

「レントゲンを撮ってみないとわかりませんが」と、彼は言った。
「もしかすると、他にも治療の必要な部分があるかもしれませんが、どうしますか」
「詳しい検査は仕事の落ち着いている時期にしたい」と僕が言うと、彼は頷いた。

「じゃ、今日は被せ物を戻すだけにしましょう」
「やっても意味がありませんか?」と、試しに僕は訊いてみた。
彼は笑って、「落ち着いたら、また来てください」と言った。

やがて施術は終わり、彼は診察室を出て、小さな子供が待っている隣の診察室へと戻っていった。
歯科衛生士の若い女性が、僕の口の中を丁寧に洗浄した。
どうやら、被せ物は無事に元通りになったらしい。

洗浄を終えた彼女は、まるで小さな子供がそこにいるみたいに、「はい、それじゃあ、お口の中、ブクブク、ペッしてくださいねー」と言った。
癒されるんだけど、と僕は思った。
不愉快だった一日がすべて洗い流されたような気がして、僕は診察室を出た。

目があった瞬間、まるで母親みたいな笑顔を浮かべて、彼女は思い切り微笑んでみせた。


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# by kels | 2015-03-23 20:10 | Snap Short Stories | Trackback | Comments(0)

歯医者は驚いたように「被せ物は入れないの?」と言った


先日、歯医者に行った。
歯医者に行ったことなんて、もう10年以上ないような気がする。
親知らずを抜いたのが最後だったかもしれない。

今回は、昔に作った奥歯の被せ物が、ガムをかんでいるうちに取れてしまったのだ。
痛みがないので、そのままにしておいてもいいような気がしたけれど、やはり、痛くなると困る。
仕事をちょっと抜け出して、街の歯医者へ出かけた。

立派なビルの歯医者だから混雑しているかと思ったけれど、全然客がいなくて、院内は静かだった。
問診表を書くと、すぐに診察室に通される。
口の中を見るなり、歯医者は「いろいろと直さなきゃダメだ」と言った。

取れた被せ物を入れてもらいに行っただけなのに、すごく大掛かりな話になっている。
歯医者はぶっきらぼうに「週に何回来れるんだ」と言った。
仕事が忙しいから、そうそう通うことはできないと言うと、歯医者は、ますます不機嫌そうな表情になった。

「他が悪いんだから、被せ物を戻したって意味がない」と、歯医者は言った。
歯医者に通うなら、きちんと時期を選んで、仕事と調整を図りながら計画的に通わなければならない。
「じゃあ、いいです」と、僕は言った。

歯医者は驚いたように「被せ物は入れないの?」と言った。
「だって、入れたって意味がないんでしょう?」と、僕は言った。
歯医者は少し黙った後で、「その可能性があるということです」と、つぶやいた。

結局、僕は黙って診察室を出た。
受付の女性は、申し訳なさそうに、初診料と診察料を取った。
まるでバカみたいだと、僕は思った。

久しぶりの歯医者だったので、オフィスに近いという理由だけで、病院を選んだのが失敗だった。
もっときちんと事前のリサーチをすべきだったのだ。
少なくとも、歯医者の対する予備知識くらいは、仕入れて。

そして、この話にはまだ続きがある。


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# by kels | 2015-03-22 21:05 | 日記 | Trackback | Comments(0)